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安いときに買って、高くなると売ればいいのでは?
~ タイミング戦略は有効か?~ |
Vol.
5 |
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- 「安いときに買って、高くなれば売る」タイミング戦略は、成功すれば大きな収益を稼ぐことができそうです。
- しかし、将来の市場の動きは専門家でもなかなか予測できません。
- また、一般に、株式の収益は高いと言われていますが、実はそれは、ほんの僅かの期間の値上がりに依存しています。言い換えると、その時期を逃すと高い収益は得られないということになります。このため、「タイミング戦略」を成功させることはなかなか難しいのが現実です。
- 「タイミング戦略」に依存しない長期投資が、資産運用においては賢明な手法といえそうです。
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日経平均がバブル後最安値をつけた頃に株を買っていれば?
2003年の3月頃の株式市場を思い出してみてください。イラク戦争や金融不安から、日経平均株価が8,000円を割り込む水準に下落し、世間は悲観ムードに包まれていました。ところが、4月に底値を打った後、その後株価は復活し、その年の終わりには10,000円を回復しました。現在の株価は、当時の底値の倍以上の水準にまで上昇していることは、皆様よくご存知の通りです。となると、2003年のバブル後最安値近辺で日本株を買って、今売れば、かなりの利益を得ることができたことになります。「安いときに買って、高くなれば売る」という資産運用の方法(これを「タイミング戦略」と言います)は、資産を増やすための有効な戦略のような気がします。この「タイミング戦略」は、資産運用において本当に有効な手法と言えるのでしょうか。今日はその点についてお話したいと思います。
株価はどうやって決まるのか?
株価がバブル後最安値近辺にあった2003年3月頃、一部のエコノミストやアナリストは、7,000円台前半から半ばくらいで株価は下げ止まるだろうと予測していましたが、多くの人にとってはどこまで下がるのか見当もつかない、といった状況でした。当時、よく次のような発言を耳にしました。「みんな株を売っているよ」。しかし、冷静に考えてみると、株価とは、売り値(売り手が適切と考える値段)と買い値(買い手が適切と考える値段)が折り合って、実際に売買された価格ですので、株価がついている以上は、「全ての投資家が株を売っている」ことはないはずです。株式市場で値段がついているということは、その値段で売っている人と同じだけ買っている人がいる、つまり、株価とは市場参加者が予測する値段の平均、と言うことができます。実際、2003年に株価は7,601円で下げ止まりました。この時期に、株を買ってタイミング戦略を成功させるためには、世の中のムードに流されずに、多くの人とは反対に「株価は上がるだろう」と予測し、株の買い手となっている必要があった、ということになります。
市場予測は本当に当たるのか?
では、そもそも市場予測はできるでしょうか。年初に、ニュースや新聞で専門家によるその年の市場見通しをよく目にします。この予測は当たっているでしょうか?
(図1)専門家による株価予想と実績
図1は、2005年初に専門家60人が予測したその年の日経平均株価の高値予想の分布と、実際の高値です。2005年は、年初に株価は11,000円台から始まって、4月頃に一旦下落したものの、その後年末にかけて大幅に上昇し、年末には16,500円の手前まで上昇した年でした。しかしながら、ご覧いただいてお分かりの通り、年初にそこまでの上昇を予想した専門家はいませんでした。専門家の実際の予測能力が低い、と言っている訳では決してありません。ただ、昨年のライブドアショックや政局の変化など、予測できない事件が次々起こるのが現実です。専門家が予測の精度を上げようと、研究と分析に多くの時間を費やしていますが、完全無欠な予測を立てるなどということは神様でも不可能かも知れません。何故でしょうか?株式市場とは様々な参加者がいろいろな思惑で売買をしている場です。ですから、仮に企業収益やマクロ経済指標を全て当てることができたとしても、株価が専門家の予測通りに動くとは限らないのです。例えば、株価が急落すると、「損失が拡大しないうちにとりあえず少し売っておこう!」とか、知り合いが株でもうけたと聞けば、株価が割高か割安かを考える前に、少し買ってみたくなることと思います。そのような市場参加者の考え方の綱引きの結果、株価は上がったり下がったりする、というのも現実です。いくら企業の業績予測が正しくても、短期的な市場参加者の気持ちの予測まで正確にするのは・・・言うまでもなく困難を極めます。
市場の値動きの特性
さらにここで、市場の値動きに関して、興味深い分析をお見せしたいと思います。「市場が1年間で12%上昇した」という場合、「毎月1%ずつリターンが積み重なった結果、1年間で12%上昇した」(複利効果は勘案せず)ということは実際には稀で、市場が上昇する月もあれば下落する月もあり、それを1年間ならした結果が12%の上昇だった、というのが通常の姿です。 (図2) 
- 全期間:1969年12月~2007年1月(全446ヶ月)を通じたTOPIXの収益率(1年あたりの収益率に換算後)
- 除く上位1%:上記の期間(446ヶ月)について、1ヶ月あたりのTOPIXの上昇率が最も高かった4ヶ月(上位1%)を除いて、TOPIXの収益率(1年あたり)を計算したもの。言い換えると、上記の4ヶ月間、日本株式への投資を行っていなかったと仮定した場合の収益率。以下、同様に、上位2%はTOPIXの上昇率が最も高かった9ヶ月、上位5%は22ヶ月、上位7%は27ヶ月を除いて計算したもの。
図2は1969年12月から2007年1月の期間の日本の株式市場の収益率を分析したものです。日本の株式市場を振り返ると、1969年12月から2007年1月までの期間に年率平均9.1%上昇しています(TOPIXベース)。しかし実際には、そのうちの僅かの月における大幅な株価の急上昇が、1969年からの約37年間における株価上昇の主な牽引役となっていたのです。具体的には、この期間で1ヶ月あたりの株価が最も上昇したのは1990年10月で、1ヶ月で約18%も株価は値上がりしました。このように株価が大きく上昇した月に投資をしていなければ、株式市場から得られる収益は低下します。もし仮に、収益率の高かった上位7%の月(442ヶ月のうちの僅か27ヶ月)に投資をしていなければ、その他の415ヶ月間は株式に投資していたとしても、収益率はマイナスに陥ってしまいます。つまり、市場予測に基づいたタイミング戦略を成功させるには、株価が急上昇する、この僅かな時期を事前に的確に予測し、実際の投資に結び付けないとならないのです。これはかなり難しい予測と言えるでしょう。
タイミング戦略は可能か?
「タイミング戦略」とは、「安いときに買って、高くなれば売る」といった投資です。これがその通りできれば、確かに儲けは大きくなりそうです。ところが、ここで問題なのは、「いつ買って、いつ売るのか」の判断です。専門家でさえ今後の市場が上がるのか下がるかという予測は、そう簡単には当たらないのです。ましてや、相場が上がる、あるいは下がるタイミングを事前に捉えることは至難の業と言っていいでしょう。そして、その僅かのタイミングを捉えないと、株式市場の上昇の恩恵は享受できないのです。そこで出てくるのが、「長期投資」という考え方ですが、これは次の機会にご説明したいと思います。
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